A Fairy Tale Of The One Shining In The Sky.

彼は澱み無き時間の中
大切なものをなくしたことに気づいた
ポケットを裏返し荷物をひっくり返してもそれはなくて
欠けてはならないものが欠けていることに気づかないまま
進み続けた足跡を恨んだ

足跡の先は無限の闇で
失ったものはかすかな欠片
探そうにも月はなく
引き返そうにも道はなく
心を閉ざそうにも影はなく
硬い世界に弱さを晒したまま泣き叫び
気づいたらもっと多くのものを失って
歩みを止めて しゃがみこんだ。

天は光を遣わそうにも
彼は混濁の世界のかすかな欠片
彼に触れようにも腕は二本しかなく
見守ろうにも目は二つしかなく
導こうにも口は僅かに一つ
混濁の世界にはあまりに少なく
ただ彼の心を見つめる。

光無き暗闇に
僅かに揺れ動いた小さな影が
影は光無き暗闇をゆき
しゃがみこんだ男につまずく
「あなたはなぜ光を見ないの」
「光など存在しないから」
「ではなぜ私はここにいるの」
「影はどこにだってゆける」
「影は光がなければ存在しえない」
「ではお前は影ではない。影の姿をした光だ」
「あなたは自らの光を知らない。あなたはそんなにも輝いているのに」

彼はふと顔を上げる
闇にいくつもの影があることに気づく
彼は必死でもがきながら
時に掌を組ませて天に祈り
時に唾を吐いて天を恨み
何千もの暗闇を超えて
ようやく一番美しい影に辿りつく
それは一度も会ったことのない光で
彼は彼に残った唯一の大切なものでその光を抱きしめ
他のすべてを投げ棄てて
光は彼を天へ導く
天は二つを両手で包み
二つは天を往く一つの光になった。

だから
闇の中で見上げた空に浮かぶ星の一つは
彼と彼女の残した光。


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