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    走ることについて語るときに僕の語ること / 村上春樹


    ★★★★

    さすがに名文家である。走ることと書くことをめぐる小説のごときメモワール。”僕は空を見上げたりするべきではないのだろう。視線を向けなくてはならないのは、おそらく自らの内側なのだ。僕は自分の内側に目を向けてみる。深い井戸の底をのぞきこむみたいに。そこには親切心が見えるだろうか? いや、見えない。そこに見えるのは、いつもながらの僕の性格でしかない。個人的で、頑固で、協調性を欠き、しばしば身勝手で、それでも自らを常に疑い、苦しいことがあってもそこになんとかおかしみを——あるいはおかしみに似たものを——見いだそうとする、僕のネイチャーである。古いボストンバッグのようにそれを掲げて、僕は長い道のりを歩んできたのだ。気に入って運んでいたというわけではない。中身のわりに重すぎるし、見かけもぱっとしない。ところどころにほつれも見える。それ以外に運ぶべきものもなかったから仕方なく運んできただけだ。しかしそれなりに愛着のようなものもある。もちろん。”

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