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  • 日の名残り / カズオ・イシグロ


    ★★★★★

    物語は記憶を矯正し位置づける。記憶は物語を捏造しそこからはみ出る。

    『日の名残り』の主人公の執事スティーブンスに焦点化された一人称の語り手はロッジ『小説の技巧』においていわゆる「信頼できない語り手」の例として挙げられているが、彼の信頼のできなさは、記憶と物語(書かれたものに限らず、巷にはびこるあらゆる物語)の信頼のできなさである。記憶と物語(の欲望)に忠実なこの語り手は、ある意味では非常に信頼に足る。そして、記憶と物語の信頼のできなさ(と自身のジョークのつまらなさ)を、物語ることによって知った語り手の、(「斜陽」物語を裏切る)ささやかな未来=ジョーク。

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