最後に

安らかに燃える暖炉の炎と
安らかに眠る君の影に
最後の一節を

城のある街で鐘がなる
街の火が消え
人々は家にこもり
何もかも忘れて食卓に座って
ただ天に祈りを捧げる

時は流れる
婦人は昨夜の交響曲を思い浮かべ
今朝の食事を思いだす
老父は二十年前の罪を思いだし
昼間の自分を悔いる
狩人は撃ちとった兎を讃え
逃がした鹿に再会を契る
商人はこの夜の損害を計算し
客の笑顔を思い浮かべる
時は流れる

やがて
城のある街に鐘がなる
人々は目を開き
街は火を灯す
人々は家を出て
歓喜を歌い上げる
高らかな讃美歌
鳴り響く楽器たち
酒を交わし言葉を交わし
素晴らしい未来の話をする
赤子たちの不機嫌な泣き声は
初々しい夫婦に笑顔をもたらし
若い男は愛を伝える

新しい時間が始まる
新しい世界が始まる


空になったカップ
消えそうな暖炉の炎
最後の一節を読み終えて
長い長い物語を静かに閉じる

君の眠りはいよいよ深く
暖かい時は更けていく
暖炉の火を静かに消して
神さまに祈りを捧げる
君が暖かい布団の中で
素敵な夢を見られるように
優しい朝を迎えられるように

心行くまで眠れ
煩わしいことすべて忘れて
太陽が高く昇って
青い鳥の美しい歌声と
心地よい日常の気配で
安らかに目覚めればいい
君はまだ何も知らなくていい

安らかに心行くまで
おやすみ



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