"Sekai no Kakera"






 遠く霞んで見える対岸の岬に、白い朽ちた灯台が見える。人の影は無く、ただ北風の音だけが響いている。海は荒れ、重い雪雲のむこうにかすかに朝日が存在していた。
 入江のもっとも奥まった浜辺まで来て、わたしたちは歩みを止めた。
 ――つまり、そういうことなんだ。
 彼は言う。足下に砂の山がある。木の枝が何本も規則正しく刺さっていて、それが人口物であることを物語っていた。彼女は無表情のままで、その山を蹴り、踏みつける。土は固まっていて、木の枝だけが折れ、落ちた。

 ――わかんないよ。
 
 彼は困ったように笑う。わたしのすべてを包み、世界は回っている。きっと彼も、気づいている。この世界は青く、丸く、一年ごとに、この場所に戻ってくる。

 “だからなんだと言うの?”

 何の意味もないの。その事実が示すものは、世界とわたしの有限性のみなのだから。
 
やはりその日、初雪が降った。東京にはまだ秋の気配が残っているというのに、冬はわたしだけを抱く。入江の彼方は、さらに白く霞んで消えた。雪も、わたしの涙も、世界は気にしない。ただ終焉にむけて、走り続ける。少しの休憩も、躊躇もない。

 ――いつか必ず、迎えにくる。

 わたしを。些細な欠片だけれど、微かな奇跡だけれど。

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